2013/01/22
米・ボルチモアを拠点に活動するヴィクトリア・ルグランとアレックス・スカリーによるドリーム・ポップ・デュオ、ビーチ・ハウスの初となる日本単独ツアーの東京公演が、1月20日に恵比寿LIQUIDROOMにて行われた。2011年の【FUJI ROCK FESTIVAL】出演より約1年半、昨年リリースされた4thアルバム『Bloom』の高評価もあり、会場は超満員。
彼らの旧友でもあり、昨年秋の全米ツアーのオープニング・アクトも務めたダスティン・ウォングの「6年前にボルチモアの小さな会場で、ビーチ・ハウスとライブをしました。観客は30人ぐらい。その時のライブも素晴らしかった。今日のライブも素晴らしいものになるでしょう。」というエピソードで公演がスタート。ループ、ディレイを駆使し、ギター一本のみで万華鏡のようにカラフルで遊び心溢れる音世界を作り上げ、その圧巻の表現力で観客を魅了した。
夏の夕暮れを連想させる白い糸のカーテンが揺れるモダン・アート調のオブジェがステージにセッティングされ、いよいよビーチ・ハウスのメンバー、そしてサポート・ドラマーのダン・フランツがステージに。序盤は『Bloom』より、「Wild」「Lazuli」「Gila」などでゆっくりと会場をその独特な世界観へ引き込んでいく。そして前作『Teen Dream』より「Norway」のイントロが流れると観客は一気に加熱、場内はたちまち熱気に包まれる。偶然にも今週末より公開されたばかりのミランダ・ジュライ監督作『The Future』の挿入歌「Master Of None」などのデビュー作『Beach House』からの選曲も。
宇宙的な幾何模様のプロジェクションとメンバーの後方より差すライティングが、ヴィクトリアのスパンコールをあしらったジャケットに反射し、白昼夢のごときドリーミーかつミステリアスで神秘的な世界観を演出。その効果もあり、中盤の観客からの「何から隠れているの?」という問いかけに「何からも隠れてないわ。私たちはみんなにありったけの愛を見せているつもりよ。」というヴィクトリアの返答から、彼らの音楽に真正面から向き合うストイックで毅然とした態度が伺える。
「この曲を演奏するのはとても久しぶり。」とアンコールでは、「Tokyo Witch」を特別に披露、ファンにとっては嬉しいサプライズに。そして佳境を迎えるライブの後半戦定番曲となった「10 Mile Stereo」に突入、ラストの「Irene」では、ダスティン・ウォングがステージに加わり、盛り上がりは最高潮に。アレックスが紡ぐ緩やかなメロディとダスティンが小刻みに奏でるギターの音色、そしてヴィクトリアの中性的なヴォーカルによるユニゾンが、今までにない奥深く重厚な音世界を作り上げ、約1時間半続いた白昼夢は儚く優美にフィナーレを迎えた。
ライブでは、アルバムの中で表現されている“静と動”がより力強く、アグレッシヴに体現され、普段はクールな佇まいのヴィクトリアの激しいヘッドバンギングや「Zebra」でのプロジェクションの動きに合わせたハンド・ジェスチャーなど、ライブの数をこなすにつれパフォーマンスもタイトに。【FUJI ROCK FESTIVAL】では大半を曲を椅子に座ったまま、控えめに演奏していたアレックスも足元のペダルワークが少なめの曲ではステージを歩き回り、伸び伸びとした演奏でその存在感を発揮していた。キャリアを重ねるごとにそのサウンドはより研ぎ澄まされ、唯一無二の世界観も鉄壁と化し、単に“聴く”バンドから“体感”するバンドへと変貌を遂げたことを証明した。彼らはこれからどこへ向かうのか…次回作がますます楽しみだ。
【Beach House Japan Tour 2013 セットリスト】
2013.01.20 恵比寿LIQUIDROOM
Wild
Walk in the Park
Other People
Lazuli
Gila
Norway
Master Of None
Silver Soul
The Hours
On the Sea
New Year
Zebra
Wishes
Take Care
Myth
Encore:
Tokyo Witch
10 Mile Stereo
Irene (with Dustin Wong)
Photo: Kayoko Yamamoto
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